特許の価値は、国ごとに違う

2021.10.22

この記事のまとめ

特許の価値を、『その特許を売った時の価格』というように、先ずは考えてみましょう。特許の販売価格を決めるのは、一般的に、その国の特許侵害事件の損害賠償金の平均値です。

つまり、その特許を、その国の裁判制度で使った場合に、いくらの金銭的な補償が、どのくらい早く得られるかなのです。

多くの場合、アメリカの特許の方が、日本の特許よりも10倍以上、高い値が付きます。

また、中国の知財高裁では、およそ4カ月で審理が終わってしまいます。そして、中国では、損害賠償金の金額も、最大で判決された損害賠償金の5倍まで、増加させることが可能です。

特許の価値は、国ごとに大きく違うんですね。こういった状況を、よく理解した上で、どこの国が、あなたのビジネスを守るために適切か、考えていかなければなりません。

よっしー社長

特許の価値って、わかりますか?

中学生リサ

価値って言うと、買った時の値段かな。

新入社員ショウ

利用した際に支払う値段じゃないかな。

よっしー社長

そうですね、その特許を誰かに売ったり、侵害した際のライセンス料の価格です。その特許の価値は、国ごとに違うんです。

中学生リサ

何で国ごとに違うの?
日本は、特許の値段が高い国なの?

新入社員ショウ

日本は、確か、小泉政権の時に、知財立国って宣伝していましたよね?

よっしー社長

よく覚えていましたね、知財立国はアメリカや中国では実現されたのですが、日本やシンガポールは目指したのですが、残念ながら実現できずにいます。

何が、特許の価格を決めるのか。

特許の価値を、『その特許を売った時の価格』というように、先ずは考えてみます。

特許の売買を長年してきて分かったことは、特許の販売価格を決めるのは、その国の特許侵害事件の損害賠償金の平均値です。

特許を買いたい人たちは、購入した特許を活用しようという、明確な目的があることが多いのです。

たとえば、同じ発明で、同じ存続期間の日本の特許とアメリカの特許があった場合、その費用の差は10倍以上違います。

多くの場合、アメリカの特許の方が、日本の特許よりも10倍以上、高い値が付きます。

特許を買う側からすると、損害賠償金が高くて、かつ、積極的な訴訟戦略が練りやすい国の特許が高額化します。

日本の特許の損害賠償金と、アメリカ特許の損害賠償金は、実際のところ、20倍の格差があると言われています。

もちろん、日本でも高額な損害賠償の判決は出ています。

具体的に例を示すと、最も高額なのは、パチンコメーカーのアルゼ対サミーのケースで、アルゼが74億1800万円という損害賠償を勝ち取りました。

しかし、これは突出した金額で、それ以外のケースでは、数億円も獲得できれば、トップ5に入ってしまう状況です。

一方で、アメリカでは、バイオ会社のセントコアが同じバイオ会社のアボットを訴えたケースでは、1338億円でした。

アメリカでは10億円くらいの損害賠償金はザラで、特許の損害賠償金の平均も2億円前後です。

日本で、2億円を超す損害賠償金がでたら、歴代トップ10に入ってしまうかもしれません。

それと同時に、その国の知財の裁判制度にも影響を受けます。

つまり、裁判制度がどれだけスピーディーに、特許権者の保護を行うことができるのか、が重要なんです。

勝訴できるかもしれないけれども、何年も裁判に時間を費やしてしまうと、その企業のビジネスに悪影響を与えてしまいますよね。

そのため、タイムリーに、特許権者の保護を行える、裁判制度をとっている国が、非常に重宝がられます。

残念ながら、日本の特許は、この両方の要素を満たさないために、特許をとっても数十万円くらいの価値しかないケースがほとんどです。

つまり、出願費用を超えないんですよね、残念ながら。

どの国で取った特許が、一番、高くなるの。

この点で、アメリカは、もう圧倒的ですが、その他に、お伝えしたいのが、最近の中国です。

中国は、積極的に中国特許の価値を、上げようとしています。

具体的には、中国の知財高裁である最高人民法院知的財産権法廷は、2020年で成立 2 周年を迎えたのですが、その活動内容が、最近、新聞に発表されました。

中国の知財高裁は2年間で案件を 5121 件受理し、4200 件を審結し、審理を早期に終結する確立は 82%だったそうです。

このうち、2020 年に 2787 件を審結し、2019 年より 1354 件増え、95%近く伸びているようです。

審理の内容から見ると、2020 年には、裁判所が民事二審の案件のうち、1742 件に審決を下しています。

効率化から見ると、2020 年には裁判官一人当たりの審結件数が 82.5 件で、平均審理期間は 123 日間でした。

つまり、およそ4カ月で審理が終わってしまうんですね。

中国の場合は、知財案件は2審制なので、3審制を採っているほとんど国よりも、早く決着しますよね。

これを聞くと、アメリカで特許訴訟を経験された方は、ピンときてしまうんです。

アメリカは、かつて、テキサス州の東地区が、とても知財の訴訟手続きが早いので、世界中の知財訴訟が集中しました。

あまりに、訴訟手続きが速すぎるので、ロケットドケット(裁判所の書類にロケットが搭載されている)と呼ばれていました。

なぜ、中国は、知的財産の保護を厚くしているのか。

いまの中国は、ロケットドケットをやろうとしていると思います。

アメリカの場合、テキサス州には、4つの裁判管轄地がありますが、一番貧しい東地区が、このような政策を取ったんですね。

言い方はどうかと思いますが、町おこしのために、原告に有利な判決を、すぐに出す特許訴訟手続を使ったのです。 

一方で、中国は、国ぐるみでやる訳ですよ。

テキサス州の4つの内の1つの地域という訳ではなくて、国ぐるみの町おこしですよね。

そして、損害賠償金の金額も、最大で判決された損害賠償金の5倍まで、増加させることが可能な法改正を2021年6月に開始しました。

もう、知財を使った国おこしです、日本が小泉政権でやろうとして腰砕けになってしまった、知財立国の本気版ですよね。

いま、それが、中国で起ころうとしています。

特許の価値を決めるのは、その国の侵害事件の損害賠償金と知財の裁判制度です。

つまり、特許を買う側からすると、損害賠償金が高くて、かつ、積極的な訴訟戦略が練りやすい国の特許が高額化します。

中国は、米国の知財マーケットを詳しく調べていて、明らかに知財の価値を上げようとしています。

日本は、もはや特許の出願件数では中国の足元にも及びません。

今後は、特許の価値も、足元に及ばないことになるかもしれません。

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