中国の特許制度を日本と徹底比較!

2021.10.22

この記事のまとめ

もはや、日本の特許法のみの知識では足りない時代になってきています。
これからの30年を考えると、中国とアメリカは、日本人として、外せないマーケットになって来るでしょう。
でも、中国へ特許を出願される方は、特許の法律が、そもそも違うので、まず戸惑いますよね。
法制度そのものも違う部分もあります。
特許出願の前から登録されるまで、時系列に違いを比較してみましょう!
いろいろと違いが見えて来ます。

よっしー社長

中国にも、特許法があるって知っていましたか?

中学生リサ

中国って共産主義っていう仕組みだよね。

新入社員ショウ

個人に権利を認めないで、社会のみんなで分け合うのが、共産主義だから、個人に独占させる特許制度は、なじまないんじゃないかな。

よっしー社長

中国は、海外の良い政策を積極的に取り入れて、独自の共産主義を作り出しているんだよね。いまや、国営の企業よりも、民間の企業の方が、勢いや影響力が大きくなっています。

中学生リサ

じゃあ、中国でも特許制度はあるんだね、日本と何が違うのかな。

新入社員ショウ

民間の企業を保護するためには、特許制度は必要ですね。

よっしー社長

大企業の特許出願が圧倒的に多い日本と違って、中国では、実用新案権や、意匠権などが、非常に活発に利用されているんだよ。

そもそも法制度からして違うんです。

法制度の違いについて、説明します。
日本では、実用新案法、意匠法は別の法律 です。
同様に、中国では、意匠も、 実用新案も特許制度で保護されています(中国専利法2条)。
日本では、実用新案権が無審査で出願件数はとても少ないですね。 はっきり言って、日本企業は殆ど実用新案を活用していません。
中国 では、実用新案権、意匠権ともに無審査です。
日本と違い、実用新案、意匠ともに出願件数が特許出願並みに多いんです。
無審査登録制度をうまく活用している中国企業がとても多いんです。
この点をよく覚えておいてください。
中国では、実用新案と、意匠を活用するのがKEYとなります。
費用も安いんですね。
それでは、なぜ、日本では、実用新案がまったく使われていないんでしょう。
実用新案権の権利行使前に、技術評価書の提出が必要で、この評価書の内容が肯定的でない場合が多く不安定な権利なんですよね。
一方の中国では、裁判所などが、実用新案権や、意匠権の紛争時に、技術評価書に相当する特許権評価報告の提出必須ではないんですよね(中国専利法61条2項)。
この点が大きく違います。
どのようなものが特許として保護されるかも違います。
日本では、ちゃんと発明の定義が有って、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものとされています (日本特許法2条1項)。
中国では、定義はちゃんと有って、 製品、方法あるいはその改良に対して出された新しい技術 構想とされています(中国専利法2条)。
加えて、日本では、産業上利用可能性を特許要 件の一つとして、産業上利用可能性を有しない発明を保護 対象から除外しています(日本特許法29条1項柱書)。
たとえば、産業上利用可能性の審査基準の中で、医療行為を保護対象から除外する旨が記載されています。
これに対して、中国でも、日本の産業上利用可能性に相当する実用性が登録要件の一つに挙げられています(中国専利法22条4項)。
中国法の実用性とは、当該発明又は実用新案が製造又は使用する ことが可能で、かつ積極的な効果を奏することができることです。
たとえば、科学的発見、知的活動の規則及び方法、疾病の 診断及び治療方法、動物と植物の品種、原子核変換 の方法により得られる物質、平面印刷物の模様などは特許保護の対象外とされています(中国専利法25条)。
各国で、何を保護するかが微妙に変わっているんですよね。
あなたが最初に出願できる国も違うことになっています。
中国では、発明した国で最初に出願する必要あるんですね(35 U.S.C. 184、中国専利法20条)。
しかし、日本では、発明した国で最初に出願するという規定は無いのです。
この点、発明したら、日本に出願しなくとも、世界のどこにでも出せる日本人は、恵まれていますね。
ただし、日本人は、中国人との共同開発時に要注意です。
日本では、 特許を受ける権利は、原則、発明者(従業員)に帰属します(日本特許法35条)。
つまり、特許のオーナーは発明した人なんですね。
そして、 特許を受ける権利を企業側に譲渡する契約をして、企業が特許のオーナーになれて、出願もできます。
中国では、特許を受ける権利が、原則、所属している企業や組織に帰属するんですよね(中国専利法6条)。
だれが発明の所有者なのか、国によって違いますね。

特許明細書の作成時の違いですが、日本では、 日本語で出願が基本です。
ただし、外国語書面出願制度を用いれば、英語での出願も可能です(日本特許法36条の2、翻訳文提出要) 。
中国では、 中国語のみで出願しなければなりません(中国専利法実施細則4条)。
外国語書面出願制度は、ありません。
なお、明細書の説明が足りていない場合に、記載不備といって、特許庁に拒絶されるのですが、
日本では、記載不備の拒絶理由は、それほど多くはありません。
中国では、 日本に比べて、記載不備の拒絶理由が多いのが特徴的です。
権利化したい部分を記載する請求項と実施形態で、文章や単語が異なる場合、実施形態の単 語に補正させられる可能性があります。
そのため、中国では実施形態を2つ以上用意するなど、広い概念で権利化を認 めさせるための工夫が、必要となります。
特許出願時の違いについて、説明します。
新規性喪失の例外についてですが、日本は2011年の改正で、要件が緩和され、特許を受ける権利を有する者の行為に 起因する新規性喪失行為を、幅広くカバーされるようになりました。
行為から半年間だったんですが、これも2018年に改正されて、1年以内に出願すればOKになりました。
中国は、 国際展覧会による展示(中国専利法24条1項1号)、学術会 議等による発表(中国専利法24条1項2号)、意に反する公 知(中国専利法24条1項3号)が規定されています。
行為から半年間に出願する必要があります。
日本法は、試験による公知・刊行物による発表、あるいは、電気通信回線による発表は、適用内で、中国よりも適用範囲が広いと言えます。

特許出願後も、こんなに大きく違うんです。

日本は、 出願日から3年経過までに審査請求する必要があります。
誰でも審査請求出来ます(日本特許法48条の3)。
これに対して、中国は、優先日から3年経過までに、出願のみが審査請求(中国専利法35条)できます。
この審査請求を期間内にしないと、日本では、 取り下げと見なされてしまいます。
復活させる 方法はありません。
中国も、同様に取り下げ擬制の考えは同じですが、復活させる方法はあります (中国専利法実施細則6条)。
まあ、日本では、出願内容は公開されているので、取り下げ擬制になっても、 第三者の権利化は阻止出来るということで、多くの出願は審査請求されずに、取り下げと見なされています。

続いて、早期に審査を行う制度ですが、日本では、法令上の規定はありませんが、早期審査制度が設けられています。
さらに、優先審査制度(日本特許法48条の6)も設立されています。
日本の早期審査は、運用を開始した2000年ころは、それほど活用されていませんでしたが、いまや、利用実績は年間2万件を超えています。
中国にも、 早期審査などに相当する制度あります (中国専利法審査指南第2部分第8章3.4.2)。

そして、情報開示義務について、比べてみます。
日本では、明細書に先行技術文献を開示する要件があります。
中国では、情報提供義務(中国専利法36条1項)で、出願日以前に おけるその発明に関係する参考資料の提出義務があります。
ただし、 罰則が明確ではありません。
また、外国出願の場合、国務院特許行政部門が、外国の審 査結果資料の提出を要求する制度もあります(中国専利法36条2項)。
この要求に応えないと、取り下げ擬制になります。

特許になるための条件も違います。
まず、新規性ですが、日本は、世界公知・公用(日本特許法29条)なんですが、中国は、2009年改正で(中国専利法22条)、世界公知・公用になりました。
そして、非常に重要な特許要件である、進歩性なのですが、日中で比べますと、日本は相当厳しく、中国は、最近、厳しくなりつつあると言えます。
日本と拒絶理由の引例が同じでないことが、中国の場合は多いです。
特に欧州出願がある場合、欧州出願が特許されるまで、中国出願は特許されない傾向があります。
これは、豪州特許庁が、米国出願がある場合、米国出願が特許されるまで、豪州出願は特許されない傾向があるのと似てますね。
拒絶理由応答の違いについて、説明します。
日本では、引用文献の開示以外の情報が少ない傾向です。
審査官に確認するか、自分で解釈する必要があります。
ただし、ここ10年くらいで、すごく丁寧な拒絶理由も増えてきました。
かつて20年くらい前は、1行くらいの理由しかなかった案件も多くありました。
応答期間は60日(在外者は3ヶ月)以内に、設定されます。
中国については、指定期間内に応答する必要がある(中国専利法37条)点は、同じなんですが、1回目の指定期間は原則4ヶ月で更に2ヶ月の延長が可能です。
2回目以降の指定期間は、原則2ヶ月で更に2ヶ月の延長が可能です。
通知書の内容は、日本の拒絶理由通知よりも丁寧です。
さらに、拒絶理由通知の応答後の違い、説明します。
拒絶理由が最終的に解消しないと、日本では拒絶査定になるので、 拒絶査定不服審判に進めることも出来ます。
中国では、取り下げ擬制(中国専利法37条)されてしまいます。

なかなか難しいのですが、拒絶理由の傾向について、違いを説明します。
日本では、発明の概念(コンセプト)を解釈し、考え方が似ていると、引 用文献との相違点を“単なる設計事項”と言い、全体として進歩性欠如とする傾向があるのではないかと思います。
中国では、記載不備に関する拒絶理由が圧倒的に多いです。
請求項と明細書で異なるワーディングを使うと、ほぼ拒絶理由が来ます。

特許になった後の存続期間も、違います。

日本では、特許権は出願日から20年(日本特許法67条)、実用新案権は出願日から10年(日本実用新案法15条)で満了します。
意匠権は、最近の改正で出願日から25年(日本意匠法21条)となりました。
この改正で、日本の意匠権がかなり見直されるのではないかと、期待しています。
中国では、 特許権(発明専利権)は出願日から20年、 実用新案権(実用新型専利権)は出願日から10年、 意匠権(外観設計専利権)は出願日から10年(中国専利法42条)で満了します。
もちろん、存続期間の延長制度についても、日中では異なります。
日本では、日本特許法67条の2で存続期間の延長制度について規定 されていますが、欧米に比べて制限が多かったのです。
特に、医薬機器が対象に含まれないなどで、日本の医薬ベンチャーの創成に影響を与えていると批判され、多少範囲が広がりました。
中国は、驚くべきことに延長制度自体がありません。

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