アメリカの特許制度を日本と徹底比較!

2021.10.22

この記事のまとめ

もはや、日本の特許法のみの知識では足りない時代になってきています。
これからの30年を考えると、中国とアメリカは、日本人として、外せないマーケットになって来るでしょう。
でも、アメリカへ特許を出願される方は、特許の法律が、そもそも違うので、まず戸惑いますよね。
法制度そのものも、日本とアメリカでは、大きく違うんです。
特許出願の前から登録されるまで、時系列に違いを比較してみましょう!
いろいろと違いが見えて来ます。

よっしー社長

アメリカの特許制度と、日本の特許制度って、同じだと思いますか?

中学生リサ

英語で申請しないところがちがうのかな。

新入社員ショウ

アメリカは、新しい技術を生み出して、いまのように大国になったという感じがしますね。

よっしー社長

そうなんだ、アメリカは、発明を積極的に保護することで、技術革新を生み出してきた国なんだね。

中学生リサ

じゃあ、保守的な知財保護制度を持つ日本と制度が違うんだね。

新入社員ショウ

日本に特許を出す感じで、アメリカに出すと、失敗しそうですね。

そもそも法制度からして、全然違うんです。

法制度の違いについて、説明します。
日本では、実用新案法、意匠法は別の法律 ですが、米国では、意匠も特許制度で保護されていて、 実用新案権制度はありません(35 U.S.C. 171) 。

どのようなものが特許として保護されるかも違う。
日本では、ちゃんと発明の定義が有って、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものとされています (日本特許法2条1項)。
米国では、なんと定義が無くて、保護対象(subject matter)や、発明の有用性(utility)の規 定があるのみです(35 U.S.C. 101)。
加えて、日本では、産業上利用可能性を特許要 件の一つとして、産業上利用可能性を有しない発明を保護 対象から除外しています(日本特許法29条1項柱書)。
たとえば、産業上利用可能性の審査基準の中で、医療行為を保護対象から除外する旨が記載されています。
これに対して、米国では、医療行為を、特に保護対象から除外するという規定はありません。
基本的に、米国では、 有用性(utility)がある限り、保護対象に含まれるんですね (Freeman-Walter-Abele基準、MPEP 2106)。
米国の厄介なところは、判例により保護対象が変化していくんですよね。
各国で、何を保護するかが微妙に変わっているんですよね。

あなたが最初に出願できる国も違う!
米国では、発明した国で最初に出願する必要あるんですね(35 U.S.C. 184、中国専利法20条)。
しかし、日本では、発明した国で最初に出願するという規定は無いのです。
この点、発明したら、日本に出願しなくとも、世界のどこにでも出せる日本人は、恵まれていますね。
ただし、日本人は、米国人との共同開発時に要注意です。

日本では、 特許を受ける権利は、原則、発明者(従業員)に帰属します(日本特許法35条)。
つまり、特許のオーナーは発明した人なんですね。
そして、 特許を受ける権利を企業側に譲渡する契 約をして、企業が特許のオーナーになれて、出願もできます。
米国では、職務発明に関する規定は、無いのですが、発明者しか出願できないようになっています。
出願した後に、特許を受ける権利を企業側に譲渡する契 約をして、企業が特許のオーナーになれるんですね。

特許明細書の作成時も、またまた違います。
日本では、 日本語で出願が基本です。
ただし、外国語書面出願制度を用いれば、英語での出願も可能です(日本特許法36条の2、翻訳文提出要) 。
米国では、 仮出願については、英語以外も出願も可能ですが、本出願の場合は英語でしなければなりません(37 CFR 1.52(d))。

特許出願時の違いについて、説明します。
特許の出願時に、米国では発明者が会社などに特許を受ける権利を譲渡した場合に は、譲渡証の提出が必要となります。
日本では、譲渡証の提出義務はありませんので、特別のことがない限り、譲渡証を提出することはありません。

また、新規性喪失の例外についてですが、米国は、グレースピリオドという考え方で、出願前1年間の間であれば、何をしてもOK です(35 U.S.C. 102(b)(1)(A)/(B))。
日本は2011年の改正で、要件が緩和され、特許を受ける権利を有する者の行為に 起因する新規性喪失行為を、幅広くカバーされるようになりました。
行為から半年間だったんですが、これも2018年に改正されて、1年以内に出願すればOKになりました。
かなり、アメリカのグレースピリオドに近づいてきました。

特許出願後も、こんなに大きく違うんです。

日本は、 出願日から3年経過までに審査請求する必要があります。
誰でも審査請求出来ます(日本特許法48条の3)。
これに対して、米国は、 審査請求制度がそもそもありません。
総ての特許出願について実体審査が行われます。

続いて、早期に審査を行う制度ですが、日本では、法令上の規定はありませんが、早期審査制度が設けられています。
さらに、優先審査制度(日本特許法48条の6)も設立されています。
日本の早期審査は、運用を開始した2000年ころは、それほど活用されていませんでしたが、いまや、利用実績は年間2万件を超えています。
米国には、早期審査(37 CFR 1.102)および優先審査制度(2011年改正)が設けられています。

そして、情報開示義務について、比べてみます。
日本では、明細書に先行技術文献を開示する要件があります。
米国では、情報開示義務(IDS制度 37 CFR 1.56)が、特許登録されるまで課せられています。
この制度は、条件が厳しい上、違反した場合に、不公 正な行為または詐欺(Fraud)として、権利行使不能状態に 陥るので要注意です。

とても大事な特許要件の違いについて。
まず、新規性ですが、日本は、世界公知・公用(日本特許法29条)なんですが、米国は 2011年改正で(35 U.S.C. 102)、世界公知・公用になりました。
そして、非常に重要な特許要件である、進歩性なのですが、日米で比べますと、日本は相当厳しく、米国は、最近、厳しくなりつつあると言えます。
日本と拒絶理由の引例が同じでないことが、米国の場合は多いです。
審査官の認定が、米国の場合は、結構、ばらつきが大きいんですよね。

拒絶理由応答の違いについて。
日本では、引用文献の開示以外の情報が少ない傾向です。
審査官に確認するか、自分で解釈する必要があります。
ただし、ここ10年くらいで、すごく丁寧な拒絶理由も増えてきました。
かつて20年くらい前は、1行くらいの理由しかなかった案件も多くありました。
応答期間は60日(在外者は3ヶ月)以内に、設定されます。
米国では、日本よりも丁寧なんですが、ここ最近は、審査官の勘違いが非常に多いです。
そのため、何度応答しても覆らないこともあるんですね。
応答期間は、基本3ヶ月(MPEP 706.07(f))で、さらに3ヶ月 まで有料で延長が可能です。
さらに、拒絶理由通知の応答後の違い、説明します。
拒絶理由が最終的に解消しないと、日本では拒絶査定になるので、 拒絶査定不服審判に進めることも出来ます。
米国では、出願が放棄したものと見なされます(35 U.S.C. 133)。
ただし、Appealすることもできますが、ほとんどの案件は拒絶が維持されると思います。

なかなか難しいのですが、拒絶理由の傾向について、違いを説明します。
日本では、発明の概念(コンセプト)を解釈し、考え方が似ていると、引 用文献との相違点を“単なる設計事項”と言い、全体として進歩性欠如とする傾向があるのではないかと思います。
米国では、1つ1つの構成要件を検討し、これらの構成要件を含む特許文献を探し出し、進歩性を判断する傾向ですね。
このため、全体として発明の概念(コンセプト)が全く異なる 引例を挙げてくることがあります。

面接審査について。
日本では、面接審査は可能ですよね。
進歩性の判断や、記載不備の解消についても判断してもらえるので、是非、活用すべきです。
米国も、もちろん可能です。
拒絶理由が解消するか否かの判断まで行ってくれることが 多いですね。
但し、明らかに審査官がおかしいと思われる解釈であって、 その考えが覆らないこともあるので、この点は要注意です。
この審査官は、言っていることがおかしいな?と思ったら、最初の拒絶理由の時から、面接審査をして、対応を考えることをお勧めします。
最近は、電話だけではなく、メールでも対応してくれる審査官が、米国では多いですね。

分割の時期の違い。
日本では、謄本送達から30日以内に、分割出願の機会があります(日本特許法44条)。
米国も登録まで分割出願の機会あります(Divisional Application、 35 U.S.C. 121)。
情報開示(IDS)は、特許証が発行されるまで義務を負うので、ご注意ください(37 CFR 1.56)。

特許になった後の存続期間も、違います。

日本では、特許権は出願日から20年(日本特許法67条)、実用新案権は出願日から10年(日本実用新案法15条)で満了します。
意匠権は、最近の改正で出願日から25年(日本意匠法21条)となりました。
この改正で、日本の意匠権がかなり見直されるのではないかと、期待しています。
米国では、 特許権は出願日から20年 (35 U.S.C. 154(a)(2))、 意匠特許(design patent)は付与日(date of grant)から 14年(35 U.S.C. 173)です。
意匠権は、付与日から存続期間が起算されるんですよね。
日本では、日本特許法67条の2で存続期間の延長制度について規定 されていますが、欧米に比べて制限が多かったのです。
特に、医薬機器が対象に含まれないなどで、日本の医薬ベンチャーの創成に影響を与えていると批判され、多少範囲が広がりました。
米国では、存続期間延長制度(Extension of patent term, 35 U.S.C. 156)と、審査手続きの遅延に対応した存続期間の調整制度 (PTA, 35 U.S.C. 154(b))が規定さ れています。
このうち、存続期間の調整制度 (PTA)は、ものすごく一般的ですよね、ただし、ちゃんとチェックしないと、延長された期間の計算によく間違いが発生しています。

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